2019 . 5 . 28
BIOTOPIA(ビオトピア)では自然の恵みが集まる「食」を通して未病の改善を提案しています。体調や季節にあった「ME-BYOフード」を摂ることで、美味しさに健康をプラスした食卓を。難しいことは何もありません。
BIOTOPIA(ビオトピア)が位置する神奈川県県西地域2市8町には豊かな自然が残っています。広がる田畑の恵み。新鮮な地元産の野菜や果物たち。豊富で澄んだ水は美味しい地酒へと生まれ変わっていきます。
これら自然の恵みである2市8町の食材はまさに「ME-BYOフード」の宝庫です。このコラムでは、季節ごとに地元の美味しい食材をピックアップしながら、「ME-BYOフード」を全10回にわたってご紹介していきます。
富士山と箱根の山を背景に咲き誇る梅の花。関東3大梅林にも数えられる「曽我梅林」を中心に小田原市の梅は、神奈川県下で最も多い生産量を誇っています。戦国時代に小田原に居を構えた北条早雲は、優秀な戦時食として梅干を重んじ、梅干作りを奨励しました。江戸時代になると、箱根超えの旅人たちが梅干を携帯するようになり、小田原宿の名物として知られるようになりました。箱根の山中で霧にとじこめられたとき、梅干を口に含んで息を吐くと霧が晴れる、という言い伝えも残っています。
温暖な気候に育まれた小田原の梅の実は、肉厚で表皮が薄く、種離れの良い梅干に仕上がります。また、小田原が海に面していて、塩が手に入りやすかったことも小田原で梅干が作られてきた理由のひとつでしょう。
「いい塩梅に席が空いていた」のように、物事の調子や加減を表すのに「塩梅」という言葉が使われますが、もともと「塩梅」は調理用語で、塩と梅酢による味の具合を表していました。食酢がまだなかった時代は、梅と塩を漬けた時にできる梅酢が大事な調味料の一つだったのです。絶妙なバランスで味付けされた料理を「塩梅がいい」と言っていたのが「物事の具合が良い」という意味に転じていったのです。梅干作りが日本人の生活の一部だったことがよく分かります。
梅干が昔から愛されてきたのは、調味料としての便利さからだけではありません。日本人は梅干が持つパワーを経験的に知っていました。
戦国時代の兵たちを描いた「雑兵物語」には、梅干の果肉と米や氷砂糖の粉を練った「梅干丸」と呼ばれるものが登場します。
「一所懸命に働いて息が切れたら、打飼の底に入れておいた梅干をとんだしてちょと見ろ。必ずなめたりしないもんだぞ。食うことはさておきなめてものどがかわくから、命のあるうちはその梅干し一つを大事にして息合の薬にしろ」
水がない時は、梅干を見て唾を出してのどの渇きをいやし、呼吸を整えよ、とあります。また、梅干は食べたりなめたりせずに、大事に持っていなければいけないと言っています。貴重品だったこともあり、当時の梅干は、食糧として毎日食べるようなものではなく、どちらかというと薬として支給されていたようです。生水を飲むことも多かった戦場では、おなかの調子を整えるために口にされたり、また、傷口にあてて使用したり、という具合に、兵士たちに重宝されていました。
こめかみに白い紙片を貼った「梅干婆さん」。漫画などで描かれる、あの紙片の正体は一体何だかご存じでしょうか?中世日本では、民間療法として「こめかみに梅干を貼ると頭痛や癇癪の予防や治療になる」とされていて、実はあの白い紙にはすり潰した梅干が塗られていたのです。江戸時代の川柳には「寝過して嫁梅干を顔へあて」なんていうものもあります。
朝寝坊してしまったお嫁さんが、「具合が悪かったから」と梅干を顔に貼って言い訳している様子を詠んだ歌ですが、民間療法に梅干がよく使われていたことが分かりますね。
梅雨という言葉が一般化したのは江戸時代だと言われています。雨が多い時期なので「露(つゆ)」から変化したとも、食べ物がカビやすいので「費(つい)ゆ」季節だから、など語源については諸説あります。しかし、一番よく言われるのは「梅の実が熟す頃の雨」だから「梅雨」となったという説です。
梅雨時は蒸し暑かったり、急に肌寒くなったりして、体の調子を崩しやすい季節です。雨の日が続くと気分もうつうつとしますし、カビや食中毒も気になります。また、湿度が高く、汗が乾きにくいので熱が逃げにくく、気温のわりに熱中症が多くなる時期でもあります。
病気ではないけれど、なんとなく調子が出ない。元気がない。そんな自分の体の出すサインを見逃さないようにしましょう。自分の体の声に耳を傾けて、体調を整えていくことが大切です。
梅雨どきのお悩みには、梅干パワーが役立ちます。
たとえば、梅干の香りに含まれる安息香酸。これは、細菌の増殖を抑えてくれます。日の丸弁当やおにぎりなどの携行食に梅干を使うのは、昔の人の経験から生まれた知恵なのですね。
また、食欲がないときに梅干を少し口にするのも効果的です。梅干の酸っぱさは唾液の分泌を促します。唾液には、色々な役目があります。食べ物を湿らせて食べやすくするだけではありません。口の中では、食べ物が唾液によって分解されます。さらに、唾液は口の中を菌から守る役割も果たしています。唾液があることで、口の中が急激に酸性に傾くことを防いでくれていて、虫歯の予防にも一役かっているからです。酸っぱさで食事にアクセントを加え、唾液の分泌を促してくれる。梅干は、食欲が落ちるこの時期にはもってこいの食材です。
体調を崩しているときに、おかゆと梅干を食べるという習慣も理にかなったものです。発熱や下痢、嘔吐が長く続けば、脱水症状をおこしかねません。脱水症状がひどければ点滴で水分補給が行われますが、点滴が普及していない途上国などでは「経口補水液」が使われることもあります。食塩とブドウ糖を水に溶かした「経口補水液」を飲むと、水分が小腸から吸収されます。下痢などの場合、大腸で水分の吸収ができていない場合が多いのですが、糖と食塩を同時に与えることで、通常の水分吸収を担う大腸ではなく、小腸から水分と栄養分が補給できるのです。梅干おかゆは、知らず知らずのうちに脱水症状を防ぐ役割も果たしてくれているのです。
梅雨の時期に熟れた梅の実を浸けこめば、来年の梅雨時には梅干となって役に立つ。日本人が経験から学んでいた、梅で梅雨を乗り切る知恵。現代の私たちがこめかみに梅干を貼ることはありませんが、梅干を食材として、また調味料として上手に使えば、きっと梅雨時のお悩み解決に一役かってくれることでしょう。
最近、梅干を食べましたか?コンビニエンスストアには色々な具材のおにぎりが並んでいるので家庭で梅干おにぎりを握る機会は、昔より減っているかもしれません。
幸修園カフェでは小田原産の十郎梅の梅干を使ったおにぎりを味わうことができます。お米は県内産のものをかまどで炊いています。シンプルだからこそ素材の良さが光る梅干おにぎり。お持ち帰りもOKです。
小田原十郎梅は神奈川県農事試験場で選抜され、昭和35年に小田原梅研究会が命名した小田原のオリジナル品種です。実が肉厚で柔らかく、種が小さいため、梅干用品種の最秀品とされています。皮が薄く破れやすいため、収穫は一つずつ丁寧に手もぎで行っています。塩と梅だけで浸け、土用干しで太陽の恵みを凝縮させる、伝統製法を守った無添加の梅干です。
小田原代官町にて創業420余年の鮑屋が販売する、その名の通り小田原で獲れた鯖の梅しそオイル漬け。ほどよく塩味がついているので、そのまま食べても、おかずやおつまみにもOK。梅しそのさっぱりとした酸味が鯖の味を引き立てます。
神奈川県産曽我の梅干のパウダーを使用した梅の風味豊かなポテトスティックです。梅の香りと味わいが、食べだしたら止まらない、あとを引く美味しさです。おやつだけではなく、お酒のおつまみにもぴったりです。