2019 . 10 . 8

「森林セラピーの楽しみ方」 “1/fゆらぎ”の癒し編

「1/fゆらぎ」がもたらす癒し効果

1/fゆらぎ
1/fゆらぎ=パワースペクトル(P)が周波数(frequency:f)に反比例

 

「自然」がいちばん心地いい

「1/fゆらぎ」という言葉を聞いたことがありますか? 知らない、という方も、もしかしたら「1/fゆらぎ」の効果を応用した家電製品などを目にしたことはあるかもしれません。海や山など、自然の中で吹くような不規則な風を作り出す扇風機や、日向ぼっこのような温かさのコタツなど、わたしたちが「心地よいと感じる不規則さ」を持つ家電製品は、「1/fゆらぎ」の癒し効果を利用して作られています。

一般的なコタツは、設定した温度が常に保たれるように設計されています。でも、「熱い」と感じたり「ぬるい」と感じたりして、ひんぱんに温度設定ツマミをいじりたくなってしまいませんか。知らず知らずのうちに、わたしたちは、適切な温度が一定に保たれた状態よりも、むしろ変化がある状態を好むようです。

また、扇風機も、送風の向きを固定せずに首振りにしている方のほうが多いのではないでしょうか。一定の風量の風に当たり続けると冷えすぎてしまいますし、だからといって微風だけだと暑いと感じるので、首振りにして強弱をつけた方が心地良く感じます。快適性をもとめて、より自然の風に近い、風量が不規則に変化する「1/fゆらぎ」の風を送る扇風機も開発され、商品化されています。

また、BIOTOPIAで体験できる森林セラピーでは、セラピストが「1/fゆらぎ」を感じるように私たちをリードして、森の持つ癒しの力に気づかせてくれます。

どうやら、わたしたちは、規則的な変化よりも「予測できそうでできない」不確かさを心地よいと感じるようです。

この私たちのカラダやココロが「心地よいと感じる不規則さ」=「1/fゆらぎ」とは、いったい何なのでしょうか?

 

そもそも「ゆらぎ」とは何か

「ゆらぎ」とは、あらゆるモノの空間的・時間的な平均値からのズレ、ランダムな変動のことです。物理学では「揺動(ようどう)」と呼ばれます。実は、この世界に存在するあらゆるモノは「ゆらいでいる」とも言えます。

自然界においては、じっと静止しているモノはありません。あらゆるモノは、時間の経過とともに必ず変化します。その変化には、厳密に言うと必ず不規則な動きを含んでいるのです。それが「ゆらぎ」です。規則正しく見えるものも、実は「ゆらいでいる」のです。

たとえば、精密機器を使って直線を引いたとします。どんどん拡大して厳密に見ていくと、必ず不規則な歪みがあらわれます。

また、物理法則の中で規則的に運動していると思われる、太陽などの天体でさえも、わずかながら不規則な運動を含んでいます。厳密に見ていくと、純粋な理論上の軌跡をとらない微妙な「ゆらぎ」があるのです。

この「ゆらぎ」があるため、わたしたちは「完璧に未来の運動を予測する」ことができません。もちろん、おおよその予測を立てることはできますが、それは計算上の平均値なのです。

現実の世界では、あらゆるモノは平均値のまわりでわずかに変動しています。つまり万物は「ゆらいでいる」と言えます。

 

いろいろな「ゆらぎ」

この「ゆらぎ」にはいくつかのパターンがあります。

ひとつめの「ゆらぎ」は、完全にランダムで予測不能な「白色ゆらぎ」「ホワイトノイズ」と呼ばれるものです。宝くじの当選番号が決まっていくような不規則さであり、予測することが全くできない非常に雑然としたランダムな変化を示します。

ふたつめは、「1/fの2乗ゆらぎ」「ブラウンノイズ」と呼ばれるものです。この「ゆらぎ」は、ある程度の予測が可能で、過去の状態に強く依存する「ゆらぎ」です。コインを投げ、表が出たらプラス1、裏ならマイナス1と、得点をつけていくゲームをグラフにしたとします。縦軸を点数、横軸を回数として何万回も行っていくと、ギザギザとした動きが記されていきます。酔っ払いの千鳥足のようなこの動きは、数理の世界では「ランダム・ウォーク」と呼ばれています。ひとつ前の値を起点としたランダムな変動である「ブラウンノイズ」は為替や株などの分野に応用される「数理ファイナンス」の基礎となるものです。

数理ファイナンス

 

「1/fゆらぎ」とは

そして、このふたつの「ゆらぎ」の中間の性質を持つのが「1/fゆらぎ」です。まったく予測不可能なホワイトノイズと、ある程度予測可能なブラウンノイズの中間の性質を持っています。「1/fゆらぎ」は「予測できそうでできない」偶然性と期待性をもつ「ゆらぎ」で、ピンクノイズとも呼ばれています。

 

身近にある「1/fゆらぎ」

気温や天候は、年間を通しても長い期間で見ても、まったく同じパターンが繰り返されることはありません。でも、ある程度の変動の幅があり、法則性を見いだすことはできます。天気予報が当たることもあれば外れることもあるのは、自然現象である天候は不規則に変化するもの、平均値に基づいた予測から「ゆらぐ」ものだからです。小川のせせらぎや木洩れ日、虫の羽音など、私たちが心地よいと感じる自然における不規則さを数値化して解析すると、その多くが「1/fゆらぎ」を示すことが分かっています。

また、音楽が私たちに与えてくれる安らぎにも「1/fゆらぎ」が隠れています。好みは人それぞれだと思いますが、「音楽」と「騒音」の違いが分からない人はまずいないでしょう。でも物理学的に言えば、「音楽」も「騒音」もどちらも「音」であることに変わりはありません。これはよく考えてみると不思議なことです。私たちが心地よいと感じる音楽の音響振動を調べると、周波数が1/fゆらぎを示すと言われています。音楽は、豊かで複雑に変化し私たちを癒してくれますが、音楽が音楽である共通の性質が「1/fゆらぎ」だという説には驚かざるをえません。

そしてまた、生体のリズムも基本的に「1/fゆらぎ」をしていると言われています。規則正しいリズムを持っていると思われる心拍・呼吸や脳波などの生物電気現象の変動にも「1/fゆらぎ」が見いだされるのです。健康な人の心拍データを解析すると、心拍周期の平均値に対してきれいな「1/fゆらぎ」があらわれますし、神経細胞が発する電気信号の発射間隔も「1/fゆらぎ」を示すことが分かっています。

 

心地よいと感じるのは「1/fゆらぎ」

人は五感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)を通して「1/fゆらぎ」を感じると、生体のリズムと共鳴し、快適感を感じると言われています。いわゆるヒーリングミュージックと言われるものは、「1/fゆらぎ」の理論を応用して作られています。波の音や虫や鳥の声など、自然の中にある「1/fゆらぎ」を持つ音を聞くと、安心感を感じ、リラックスできるというのです。もしかしたら、私たちは、自然と同じリズムを感じることで、人工的な規則性が強いる緊張感から解放されるのかもしれません。

 現代の私たちは、人工的な直線、規則的な造形に囲まれて生活しています。また、自らの生体のリズムではなく、時計が示す時刻に従って行動しています。自然界にはない刺激を受け続けることは人を疲れさせるのでしょう。私たち現代人は、知らず知らずのうちに五感を閉じて、それらのストレスから身を守ろうとしているのかもしれません。

BIOTOPIAで体験できる森林セラピーでは、ガイドと一緒に森の中を散策します。鳥の声に耳を澄まし、吹き渡る風を感じたり、森の香りや木の幹のごつごつした感じを味わったり。自然に身をゆだねて、「1/fゆらぎ」がもたらす「癒し」を味わってみませんか。

 

BIOTOPIA 森林セラピー

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森と五感をシンクロさせ、リラックスする森林セラピー

美しいBIOTOPIA台地の森を、森林セラピスト・森林セラピーガイドがゆっくりとご案内し、お客さまの五感を開くお手伝いをいたします。
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