2022 . 1 . 26

『アート@BIOTOPIA』書のススメ編
「書」の世界を覗いてみよう!

ビオトピアで「アート」

ビオトピアでは、「アート」と「癒し」という観点から、「日展作家が教えるアート教室」を開催しています。時間に追われる現代社会において、「アート」は自身のココロとカラダを整えて、質の高い「癒し」を提供してくれるものです。
今回は「アート」としての「書」についてご紹介します。

「書」って難しいもの?

「書」と聞いて、どんな感じがしますか?「見たことはあるけれど、どうやって鑑賞したらいいかよく分からない」という人は、少なくないと思います。まず初めに「何て書いてあるのだろう?」ということが頭をよぎり、文字が読み取れないと、結局「難しくて理解できない」と感じてしまうのでしょう。

そもそも「書」には、「文字」という日々私たちが思いを伝えるために使っているものが書かれています。また、多くの人が学校の授業で子どもの頃に一度はお習字をしたことがあるのではないでしょうか。そう考えると、実は「書」は誰にとっても身近な存在と言えます。では「書」の世界を覗いてみましょう。その「アート」な魅力に気付けば、もっと気軽に「書」をとらえることができるかもしれません。

「書」の過程を楽しむ

「書」を鑑賞するときには「制作の時間的流れ」はとても重要な意味を持ちます。「書」は「形(かたち)」、つまり太さや長さ、色の濃淡などだけで判断することはできません。なぜなら「書」は、書かれたそのプロセス、その過程を見ることに大きな意味があるからです。

たとえば、ここに「山」と書かれた「書」があったとします。筆順どおりに「見る」ことで、その「山」の字がどのように書かれたのか、私たちは書いた人の筆の運びを追体験することができます。文字の線の太さや細さも、単純に「太い」「細い」だけではなく、そこに作者のためらいや決意、筆のスピード感、などをも感じ取ることができるのです。

このように、作品を「見る」ことは、自分で「書く」ことに支えられていて、「書く」ことと「見る」ことを分けて考えることはできません。この2つが表裏一体の関係にあって、分かちがたく結びついているのが「書」なのです。

「書体」を知ると世界が広がる 「書」の5つのスタイル

また、「書」と向き合う時に、もうひとつ大切なことがあります。それは「古典」と呼ばれる過去の「書」を知ることです。そもそも「文字」はひとりの個人が作り上げたものではありません。多くの人びとの思い、時代の流れ、様々な要素がからみあって、文字のカタチが出来あがってきました。

「書体」を知ると、いにしえの人びとがどのような思いで「書」に向き合っていたのか、より深く理解することができます。

篆書(てんしょ)

「書」の歴史は、漢字の原型ができた約3,500年前の中国に始まります。亀の甲や牛の骨を焼いてできたひび割れの形で吉凶を占っていたことから「甲骨文字」が形成され、時代が進むにつれ、それぞれの地域ごとにバラバラの文字が使われるようになりました。

広大な中国を統一した秦の始皇帝は、国内で使われる文字もひとつに統一しました。この統一された文字と、それ以前の甲骨文字などは、篆書(てんしょ)と呼ばれます。もっとも古い文字である篆書(てんしょ)は、神聖な書体であると考えられました。

手元に紙幣があったら見てみてください。オモテ、ウラとも1ケ所ずつハンコの印影が印刷されています。これらは篆書(てんしょ)で「総裁乃印」「発券局長」と書かれています。パスポートの表紙の「日本国旅券」の文字や、最近では、呪術をテーマにしたバトル漫画の題字にも使われていたりと、「篆書(てんしょ)」は意外と日常生活の中で見ることができる書体です。

隷書(れいしょ)

広大な中国では、地域によって違う言葉が話されていましたが、統一された文字を使うことでその広い国土を効率的に統治するようになっていました。でも、篆書(てんしょ)は書くのに時間がかかります。役人たちは次第に、画数が少なく簡略化された書式である隷書(れいしょ)を使うようになっていきました。横長でゆったりとした右払いが特徴的な、美しく様式化された書体です。現在でも多くの石碑に刻まれた形で目にすることができます。

草書(そうしょ)

隷書(れいしょ)を速書きすることで生まれたのが「草書(そうしょ)」です。紙の発明により、文字は大きく変化しました。それまで石碑に刻まれたり木簡に書かれていた文字ですが、以前とは比べ物にならないくらい、のびのびと自由な表現をすることが可能になりました。草書では、点画を省略したり、形を崩して書かれていますが、簡単に書けるということだけでなく、美しいかたちで書くということも重視されています。

行書(ぎょうしょ)

草書(そうしょ)ほど書き崩さない、日常的に使われた書体が行書(ぎょうしょ)です。漢の時代から現代まで使われていて、私たちも普通に読み書きすることができる書体です。

楷書(かいしょ)

行書(ぎょうしょ)をさらに整理して、点画の始まりと終わりがはっきりしているのが、楷書(かいしょ)です。唐の時代(7世紀~)には、篆書(てんしょ)や隷書(れいしょ)に代わって正式な書体として公文書などに使われるようになりました。

「臨書(りんしょ)」とは

どんな有名な書家も、過去の「古典」と向き合うことで、自分の「書」をつくりだしてきました。「「臨書(りんしょ)」は、お手本となる「書」をそっくりそのまま真似して書くことです。この「よく見て、まねて書く」ことから、「書」は始まります。形をそっくりそのまままねする「形臨(けいりん)」だけではなく、「意臨(いりん)」という方法もあります。これは、お手本となる「書」の持つ雰囲気を捉え、表面的な形にとどまらず、その奥底にあるものを再現する、という臨書方法です。

もしあなたが「書の世界を覗いてみたい」と思うのなら、実際に筆を使って「書く」経験をしてみましょう。きっと、時間とともに展開していく「書」のダイナミズムを身体で感じる楽しさを得られることでしょう。

「日展作家が教えるアート教室」に参加してみよう

ビオトピアの「書」の講座は、「隷書を楽しむ」「草書に親しむ」「楷書を知る」など、書体ごとに「書」に触れる形式をとっています。日展で活躍する講師による講義と、実際に筆を使って臨書を行います。テキストやお手本はもちろん、書道道具もご用意していますので、手ぶらで参加して頂けます。
墨の香り、集中する時間、「書く」ことの自己表現、「書」の文化を学ぶこと…。整った字を書く「お習字」とはひと味違ったアプローチで「書」を楽しめる貴重な講座となっております。どなたでも参加して頂けますので、気軽にお申込みください。